
「やればできる夢の実現〜起業から上場への熱き思い〜」
川分 陽二氏
(フューチャーベンチャーキャピタル株式会社代表取締役社長)
(平成16年10月2日:起業家フォーラムにて)
■まず確認すべきこと
起業時に大事なのは、なぜ起業するのか、自分がどういう人生を送りたいのかをよく 考えることです。「家業としてやっていく」のか「上場を目指す」のか、今後の方向性にも関連します。前者の場合、家族が食べていけたらそれで良いのでローリスクで展開すれば良いのですが、後者の場合、リスクを取りつつ会社を成長させて収益を上げていかねばなりません。全般的傾向としては起業動機がお金儲けだけだと息切れし、世の中のためという社会性に富んだ動機ほど長続きしているようです。事業分野の選択については、成長分野を選び、第三者にわかりやすい事業内容にしておくと、支援が集まりやすく、成功に近づきやすいと言えます。
起業時の資金については、十分な準備が必要です。資金がなくなった段階で事業は継続不可能になりますし、不足すると精神的に非常に不安定になります。金融機関に頼るよりも、株式会社制度のメリットを利用して出資者を募ることも考えてみましょう。「株主は有限責任」ですから、出資額以上の責任を問われることはありません。小口で募ると集めやすいし、人間少しでもお金を出すと応援したくなるもので皆さんの会社や商品を口コミで広めてくれる、人を紹介してくれる、等支援してくれるようになります。誰にいくら出してもらうかをよく検討した上で、出資者を探してみましょう。人材については、投資しただけリターンがある、と考えて良いでしょう。優秀な人材を雇うことができたら、事業は飛躍的に成長します。人が増えるのと同時に社内統制の仕組みづくりも意識しておきましょう。また、ビジネスチャンスは「人」が運んでくれるもの、と心得て日頃から人脈形成に努めてください。
■上場を目指す人のために
上場にあたっては、内部の管理体制・成長性・セグメント・差別性が問われます。内部の管理体制とは、お金・人・予算と実績の管理ができているか、ということで、損益の数値把握、人材教育、予算計画と実績との差異分析を行っていれば問題ありません。成長性とは投資家が投資したい分野かどうか、セグメントとは商品・サービスの収益性を分析して、利益の出るモノを選び、集中しているか、ということです。差別性(新規性)とは、ライバルに打ち勝つ優れたモノがあるか、イノベーションがあるか、ということになります。この差別性は、曖昧な言葉でなく数値で具体的に表現します。ライバル企業が上場している時には、ディスクロージャーされている資料を基に自社の差別性を比較・分析することも必要です。
事業というのは思ったとおりに運びません。起業時にビジネスプランを立てることは大事なのですが、そのとおりにはなりません。しかし、それでいいのです。想定していた領域と異なる事業チャンスに遭遇したら、プランに拘泥することなく、柔軟にかつ貪欲にそのチャンスをモノにして収益にすることを考えてください。思いも寄らぬ大きなビジネスに展開することもあるので、最初から無理と決めずにキャッシュを確保するんだ、と考えて事業の幅を伸ばしていく方が良いでしょう。そうこうしているうちに、ビジネスプランを再構築すべき時が訪れるので、その時に方向性を修正すれば良いのです。
京都は大学が多く、研究成果や技術が蓄積されています。京都でベンチャーとして創業し、世界的に活躍している企業も数多く、日本初のベンチャー・キャピタルが生まれたのも京都です。創業に最適の土地だと私は考えています。どうぞ、皆さんこの「地の利」を存分に生かしてください。皆さんのご活躍を心よりお祈り申し上げます。
川分 陽二氏:京都大学法学部卒業。旧住友銀行にて新規開拓・取引深耕業務担当後、国際業務部に異動、アラブ首長国連邦アブダビ国立銀行にトレーニーとして派遣され、海外銀行の物的無担保の融資方法を学ぶ。その後日本アセアン投資株式会社(現日本アジア投資株式会社)に入社、投資部長・大阪支店長・審査部長・業務推進部長を経て取締役に就任。1998年、フューチャーベンチャーキャピタル株式会社を設立・代表取締役社長に就任、2001年ナスダック・ジャパン(現大証ヘラクレス)に上場。
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