西陣帯生産拠点として成長する丹後産地・養父織物のIT活用支援
支援企業名養父織物
織キズ発見システム用のデータ収集
相談のきっかけ西陣織工場の生産性を向上したい
和装需要の減少や従事者の高齢化が続く丹後織物産地支援のため、北部支援センターでは、京都府織物・機械金属振興センターと協働で、約10年前から西陣織工場として自社工場拡大を進める養父織物の支援を続けてきました。
コロナ禍の2021年には、自社オリジナル製品「丹後八寸名古屋帯」の開発のため企業連携型ビジネス創出支援事業を活用した支援を実施し、また、経営と技術の両面から新規雇用の若手織布工(織機を操作する従業員)の人材育成を継続的に行っています。
2024年、西陣織メーカーからの要望に応えるため、「中長期の視点に立って工場の生産能力を向上していかなければならない」という相談から新たな伴走支援をスタートしました。
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課題と支援内容令和6年度「IT技術を活用した現場改善ワークショップ」による支援
養父織物は現在、西陣織メーカー8社から生産を受注し、織機20台、織布工13名(4チーム)、平均で織布工1名あたり織機2台の稼働体制をとっています。5年後の織機増設・工場拡大、従業員新規雇用計画実現のため、織布工1名あたり3台の稼働体制、現在比で約1.5倍の生産性向上目標に向けて、京都コンピューターシステム事業協同組合(KCA)に協力を依頼し、令和6年度「IT技術を活用した現場改善ワークショップ」を実施しました。
約3か月間、現場作業の調査と織布工を交えたミーティングの結果、最も生産性を低下させる原因「織キズ発見の遅れ」「手戻りロス」を確認し、その根本原因となる「製織時に織物の表面を直接確認できない」「織機に付属する旧来のセンサーが不十分」の問題解決のため、製織時の「織物製品の見える化」カメラモニタシステムを提案、「令和6年度京都府生産性向上・人手不足対策事業費補助金」を活用して「織キズ早期発見システム一式」を織機1台に設置しました。
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支援の効果5年後の工場拡大に向けたIT技術活用の第一歩
導入したカメラモニタシステム一式はベテランの織布工が現場での使用を開始、「織キズ早期発見」のツールとしての効果も確認され、若手織布工からの要望もあり、今後の本格導入が待たれます。同時に、本システムは、京都市産業技術研究所、西陣織メーカー及び養父織物を加えた「織物未来共創LAB」グループの協働で『AIを活用した織キズ早期発見システム』として使用、「織キズ学習用データ」の蓄積作業が進められており、AIシステムの実用化が進められています。さらに、システムで使用するタブレットは、将来、生産管理システム導入の際、各織布工が利用できる端末機器として計画されています。
「現場改善ワークショップ」をきっかけに、令和7年度、同社は新たに「スマートファクトリー構想」を掲げ、「生産管理システムの構築」「織キズ早期発見システムのブラッシュアップ」「織布工育成プログラム作成」などをテーマとした中期計画を作成、IT技術活用による工場の生産性向上・人材育成のため、引き続きITベンダーグループ(KCA)の協力によるワークショップなど、エコノミックガーデニング事業の活用を含めた伴走支援を継続しているところです。
担当者からのコメント
伝統産業分野においても、IT技術を活用した生産性の向上・効率化が必要な時代となっています。
養父織物の新しくスタートしたIT活用は、背景に工場拡大・新規雇用・生産性向上が一体となった事例として、今後、丹後織物産地活性化につながる波及効果も期待されます。