ブックタイトルクリエイティブ京都M&T 2014-7・8(No.102)

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クリエイティブ京都M&T 2014-12(No.106)

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クリエイティブ京都M&T 2014-12(No.106)

Management & Technology for Creative Kyoto 2014.12 14研究報告お問い合わせ先京都府中小企業技術センター 基盤技術課 化学・環境担当 TEL:075-315-8633 FAX:075-315-9497 E-mail:kiban@mtc.pref.kyoto.lg.jpマイクロ波を利用した新たな木材分解方法の検討について■基盤技術課 笠木祥弘1 はじめに 間伐材の利用や処理は、京都府だけでなく全国的に大変苦慮しており、間伐材をバイオマス資源として有効利用することが望まれています。そこで、木材の構造成分ですが現在あまり活用されていないリグニンに着目し、機能性プラスチックの生成などを目指しています。リグニンの抽出における加熱操作を従来のヒーターによる加熱とは別に、有機合成分野で大幅な反応時間低減などの成果を挙げているマイクロ波を利用した加熱を検討しました。2 実験方法 リグニン抽出は、試料(木粉)の酢酸を利用した方法で行い、そのプロセスを図1に示しました(従来:還流、今回:マイクロ波による加熱)。 試料(2.5 g)をフラスコに入れ、酢酸(25 mL)及び硫酸(1 mL)を加え、還流又はマイクロ波による加熱を行いました。続いて、ろ過を行い、ろ過物を蒸留水で洗浄し乾燥したものを粗セルロースとしました。また、ろ液は蒸留を行い、残渣を蒸留水で注水後、不溶性のものを酢酸リグニンとしました。 ヒーターによる還流時間はそれぞれ60分、120分、180分、240分で行い、マイクロ波による加熱は、室温から120度までに10分間で昇温後と定温でさらに10分、20分、30分及び40分で加熱し、抽出物の収量を検討しました。 なお、マイクロ波発生装置はマルチモード((株)マイルストーン製 ETHOS1)とシングルモード((株)ジェイサイエンスラボ製 グリーン・モチーフⅠc)の2種類を使用しました。(図2)(マルチモードは通常の電子レンジと同じく、装置内の容器にマイクロ波をランダムに照射しますが、回転することでマイクロ波を均一化するのに対し、シングルモードは位相がそろったマイクロ波を照射できエネルギーを効果的に吸収させることができます。)3 結果 ヒーター加熱とマイクロ波(マルチモード、シングルモード)加熱による抽出を比較したところ、酢酸リグニンの抽出量はほぼ同等でしたが、マイクロ波加熱はヒーター加熱に比べて、使用電力量がマルチモードでは約3分の1に、シングルモードでは約8分の1に低減しました。また、抽出時間も約5分の1まで短縮でき、省エネ・省コスト化が図れることがわかりました(表1)。 赤外分光分析の結果(図3)からは、ヒーター加熱とマイクロ波加熱(シングルモード)では吸収帯に差異があることがわかり、若干異なる構造を有する可能性が示唆されました。4 まとめ 今後は、リグニンの特性を調べ、求められる性能を発揮できる新規プラスチック材料などの生成に向けた検討を進めて行きたいと考えています。 最後に、本研究に際して、木粉のマイクロ波による抽出について、様々なご指導をいただきました京都府立大学大学院生命環境科学研究科 宮藤久士准教授に深謝いたします。また、本研究の材料として木粉を提供いただきました京都府森林組合連合会京都北部分室に深謝いたします。図3 各加熱法での抽出物の赤外吸収スペクトル図1 リグニン抽出のプロセス図2 各マイクロ波発生装置表1 各加熱に用いた電力量ヒーター マイクロ波 マイクロ波(マルチモード) (シングルモード)消費電力 100(W) 130(W) 60(W)使用時間 180(min) 40(min) 40(min)電力量 0.3(kWh) 0.09(kWh) 0.04(kWh)マルチモード(株)マイルストーン製(当センター所有)シングルモード(株)ジェイサイエンスラボ製(京都府立大学所有)