ブックタイトルクリエイティブ京都M&T 2014-7・8(No.102)
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クリエイティブ京都M&T 2014-12(No.106)
13 Management & Technology for Creative Kyoto 2014.12お問い合わせ先京都府中小企業技術センター 基盤技術課 化学・環境担当 TEL:075-315-8633 FAX:075-315-9497 E-mail:kiban@mtc.pref.kyoto.lg.jp研究報告ICP発光分光分析によるアルカリ金属分析に及ぼすイオン化干渉の影響について■基盤技術課 関 浩子1 はじめに ICP-AES(ICP発光分光分析)によりアルカリ金属の分析を行う際に、他のアルカリ金属が共存すると、イオン化干渉によりピーク強度の増加が見られます。ICP-AESにおいては標準溶液により作成した検量線から未知試料の濃度を求めるため、標準溶液と未知試料の組成が異なっていると分析値に誤差が生じます。例として海水中の微量のセシウム(Cs)やリチウム(Li)の分析を行う際には、多量に共存するナトリウム(Na)の影響を考慮する必要があります。 そこで、アルカリ金属の分析の際、多量に共存することの多いナトリウム及びカリウム(K)の影響を定量的に調べました。併せて、ICP-AESにおいて感度が低く、低濃度での分析が困難なセシウムについて、感度及び精度の向上を検討しました。2 実験方法1)測定元素に対する干渉元素の影響を調べるため、表1に示す試料溶液を調製しました。測定元素濃度はナトリウム、カリウム及びリチウムについては10mg/L、セシウムは100mg/L としました。それぞれの条件で発光強度を測定しました。2)セシウムのみを0から500mg/Lまで段階的に調製した溶液及びそれぞれナトリウムを10,000mg/L 共存させた溶液を調製し、これらを標準溶液としてそれぞれ検量線を作成しました。検量線作成に使用した溶液を未知試料として、検量線から濃度を読み取りました。3 結果及び考察1)いずれの元素についても干渉元素濃度が増加すると、測定元素の発光強度は増加しました。干渉元素としてはナトリウムよりもカリウムの方が発光強度の増加率は高くなりました。 セシウムに対するナトリウムまたはカリウムの影響は図1のとおりです。干渉元素10,000mg/L までは急激な発光強度の増加が見られますが、それ以上では増加は緩やかになりました。発光強度が増加するにつれて変動係数が小さくなり、発光強度が安定する傾向が認められました。2)共存元素がないときのセシウムの検量線は図2のとおりです。低濃度領域では発光強度の変動も大きく、200mg/L 以上でないと安定した定量ができません。一方、ナトリウムを10,000mg/L 共存させたときのセシウムの検量線は図3のように高い直線性を示しました。 それぞれの検量線から同じ溶液を未知試料として分析した結果は表2・3のとおりです。通常、200mg/L以上で定量が可能であるセシウムについて、ナトリウムを10,000mg/L共存させることで発光強度が増加し、20mg/L以上で定量分析が可能となり、約10倍の感度を得ることができました。 このようにアルカリ金属によるイオン化干渉を利用することにより、感度の低いセシウムをより高感度で、また安定した精度で定量できることがわかりました。図1 Cs測定時のNa・K共存量の影響図2 Cs検量線(共存元素なし)表1 測定試料表2 セシウム定量結果(共存元素なし)(単位:mg/L)(濃度の単位:mg/L)測定元素 干渉元素 干渉元素濃度Na K 0-10,000K Na 0-10,000Li Na 0-10,000K 0-10,000Cs Na 0-50,000K 0-50,000Run 設定濃度 測定濃度 相対誤差(%) C.V(. %)1 0 4.3 - 85.82 10 7.3 -27.3 51.43 20 22.3 11.5 5.84 50 55.6 11.2 4.15 100 86.1 -13.9 7.36 200 204.6 2.3 1.77 500 499.8 0.0 1.7 図3 Cs検量線(Na10,000mg/L共存)表3 セシウム定量結果(Na10,000mg/L共存)(濃度の単位:mg/L)Run 設定濃度 測定濃度 相対誤差(%) C.V(. %)1 1 -1.5 -248.0 35.22 10 4.1 -59.2 5.63 20 19.4 -3.0 7.14 50 48.3 -3.5 5.15 100 105.7 5.7 6.96 200 214.4 7.2 0.67 500 523.1 4.6 1.6