ブックタイトルクリエイティブ京都M&T 2014-7・8(No.102)

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クリエイティブ京都M&T 2014-10(No.104)

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クリエイティブ京都M&T 2014-10(No.104)

製販企業が主導する医工連携がポイント 私はこれまで19年間、医療機器分野の研究や支援に携わってきました。現在は、とりわけ医工連携で伸びようとしている地域と企業の支援に注力しています。 医療機器産業の魅力は、世界で約20兆円あるといわれる大きな市場に加え、今後も堅調な成長が見込まれることです。わが国でも国家戦略に位置づけられ、大型の予算措置や規制緩和が期待される他、地域で医工連携を支援する取り組みが活性化するなど、ビジネスチャンスが広がっています。経済産業省の「医工連携事業化推進事業」も支援策の一つです。「中小企業」「ものづくり」「事業化」をキーワードに大規模な予算で取り組まれています。私自身その中の36の実証事業に関わり、医療機器開発に必要な専門知識の導入などを支援してきました。いくつもの医工連携の成功例、失敗例を見てきた結果、ものづくり企業が無理なく、円滑に参画できる医工連携とはどのようなものかが、明確になってきました。 新規に参入するものづくり企業が医療機器の製造販売を行うのは、非現実的といえるほど高いハードルを越えなければなりません。そのハードルとは、①臨床現場との関係構築・維持、②臨床ニーズの目利き、③市場環境や薬事法を踏まえた製品デザイン、④薬事法への対応、⑤メンテナンスを含めた販路の確保の5つに集約されます。ものづくり企業にとって非常に高いこれらのハードルも、実は、医療機器の製造販売を行う製販企業のノウハウを活用すれば、比較的簡単に越えることができます。つまり、事業化の成功率の高い医工連携とは、製販企業がイニシアティブをとり、事業化を強力に推進する体制を作り、そこにものづくり企業や大学が参画していくかたちではないかと考えています。こうした医工連携を「製販企業ドリブン型・医工連携モデル(製販ドリブンモデル)」と呼んでいます。製販企業を全国から募る新しい連携のかたち これまでの医工連携の多くは、医療現場とものづくり現場が直接つながるものでした。この場合、臨床や医療機器に関して圧倒的な知識を持つ医師の主導で開発が進められ、試作品ができた頃になって、薬事法やコストとの折り合いがつかず、とん挫することが少なくありませんでした。一方、製販ドリブンモデルの特長は、臨床現場とものづくり企業との間に、製販企業が入ることです。豊富な臨床知識を持つ医師に対し、製販企業は薬事法や医療機器市場に関する実践的な知識を持っています。この二者が具体的なディスカッションを行うことで、製販企業が「売りたい」「薬事法を通せる」と思える製品デザインを検討することができます。こうして製品デザインというゴールが見えた段階で、ものづくり企業が参画してこそ、世界に誇る高い技術力を存分に発揮することも可能になります。ものづくり企業にとっては、得意分野を生かしつつ、苦手とする医療機器の専門分野や薬事法に関しては他の専門家に任せることができるのです。この体制を作ることができれば、スムーズに、迅速に事業化まで進めることが可能になります。 しかし、こうした製販ドリブンモデルは、これまではなかなか進展しませんでした。理由は、医工連携の多くが地域産業振興の枠組みで議論されていたためです。多くの地域には製販企業が少なく、連携の枠組みに入れることが難しかったのです。しかし近年、地方自治体の中には、臨床現場とものづくり企業は地域内で確保しつつ、製販企業は全国から、場合によっては海外から参画を募るという新しい動きが始まりつつあります。東京都大田区や青森県、三重県、宮崎県などでは実際にそうした例が見られます。本郷エリアの製販企業との連携と支援機関を通じた公的資金の活用 そうなると次は、どこで製販企業を見つけるかが課題になります。実は、日本で特異的に製販企業が集積しているエリアがあります。それが、東京都文京区内、東京大学病院の門前町にあたる「本郷エリア」です。本郷エリアには、実に100社以上の製販企業が軒を連ねています。このエリアの製販企業は、売上10億から20億円の中小企業が中心で、事業規模は小さいながら、多品種の医療機器業界の特定領域で際立った存在感を示し、国内市場を押さえている企業が少なくありません。中小企業だからこそ、全国のものづくり企業と連携しやすいところが利点です。 これらの中小の製販企業は、臨床現場から自社製品の改良ニーズを得ているにもかかわらず、それを実現する十分な資金や技術がないという課題を抱えておられます。開発資金とものづくり企業が揃えば、取り組めるテーマはたくさんあります。そこで必要となるのが、公的資金を活用するノウハウです。京都産業21のような地域のコーディネータの支援で、公的資金の活用やものづくり企業とのマッチングを実現できれば、本郷エリアの製販企業との共同開発を成立させられる余地は十分あります。そのためには、地元のものづくり企業を知りつくし、迅速にマッチングできる、しかも公的資金9 Management & Technology for Creative Kyoto 2014.10第4回ライフサイエンス・ビジネスセミナー医療機器産業への無理なく円滑な参入のかたち取 材京都次世代ものづくり産業雇用創出プロジェクト第4回ライフサイエンス・ビジネスセミナー2014(平成26)年8月6日、京都リサーチパークにおいて第4回ライフサイエンス・ビジネスセミナーを開催しました。今回は、成長産業である医療機器分野に注目。製販企業と連携することでものづくり企業が新規参入する可能性について、医工連携支援、製販企業など多様な立場から講演していただきました。製販企業との協働による医療機器分野での事業化に向けてテーマ柏野 聡彦 氏一般財団法人日本医工ものづくりコモンズ 理事三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社政策研究事業本部 主任研究員