ブックタイトルクリエイティブ京都M&T 2014-7・8(No.102)

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クリエイティブ京都M&T 2014-9(No.103)

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クリエイティブ京都M&T 2014-9(No.103)

シリーズ“京の技”―ナカガワ胡粉絵具株式会社絵具に含まれる鉛が変色、環境汚染の原因に人工的な新岩絵具を作る際に用いられる釉の体質には、通常、鉛が含まれています。鉛には溶解温度を下げる作用があり、焼成・溶融中、温度が高くなりすぎるのを防ぐことで、鮮やかな発色を可能にします。しかし人工的に作った原石、硼珪酸鉛ガラスには、硫化水素に弱く、触れると黒く変色してしまうという弱点があります。近年、大気汚染や住宅の建材に含まれる化学物質、あるいは密閉率が高く、風通しの悪い住宅構造などの影響からか、日本画の変色が顕著になってきました。原因を追及した結果、硼珪酸鉛ガラスに含まれる珪酸鉛が硫化水素によって劣化していることが判明。加えて、環境問題を懸念する声の高まりの中で、鉛による環境汚染を防ぐため、鉛を含まない岩絵具が求められるようになってきました。こうしたことが契機となり、当社は京都府中小企業技術センターと他社との共同研究で、日本画用の無鉛岩絵具の開発に着手しました。鉛を用いず、従来と遜色ない鮮やかな発色の岩絵具を開発開発の課題は、鉛を用いなくても、従来の新岩絵具と同様の発色、艶を実現することでした。まず釉の体質に含まれるフッ素や珪素などの物質を細密に分析することから開発をスタートさせました。その結果から、フッ素を含む硼珪酸系物質で、かつ融点の低い組成を見出し、それと金属酸化物を合成。るつぼを用いない独自の溶融法で無鉛でありながら、従来製品と比較しても遜色のない鮮やかな発色の新岩絵具を作ることに成功しました。さらにできあがった新岩絵具を硫化水素、窒素化合物、亜硫酸ガスの混合ガス、湿度99%のチャンバー(密閉容器)に入れ、96時間もの暴露実験(劣悪環境下における性能実験)を実施。その結果、黒変や色の劣化が見られないことを確かめました。この新しい岩絵具は、大気汚染ガスによる影響をほとんど受けず、また鉛による環境汚染を防止するだけでなく、安全面、コスト面にも優れています。他にはない画期的な絵具として「京上岩絵具」と名づけ、登録商標を取得する他、製造方法の特許を取得しました。現在までに11種類、10階色の「京上岩絵具」の製品化を実現。今後さらに研究開発を進め、30種類、10階色、計300色の製品化を目指しています。鮮やか・多彩な「京上岩絵具」国内のみならず海外へも販路を拡大無鉛岩絵具「京上岩絵具」は、環境保全はもちろん、現代の環境に配慮した人工岩絵具として、今後、全国の絵画用画材業界や、小中学校・美術系大学などの絵具ユーザーに普及していくと期待されます。当社では、国内の岩絵具市場で新規顧客開拓を進めるだけでなく、欧米や中国、韓国などの海外市場への展開も図っています。独特の多彩な色彩を持ち、しかも粒子状の絵具は、西洋絵画の油絵具や水彩絵具には見られません。新しい絵画表現を可能にする絵具として、グローバルに顧客を開拓していきたいと考えています。無鉛岩絵具は、鉛への規制が強まる国々への輸出においても力強い突破口になるはずです。岩絵具の製造は、長い年月をかけて受け継がれてきた伝統技術です。日本画の市場が縮小傾向にある日本にとどまらず、世界に販路を広げ、より多くのお客様に岩絵具の良さを知っていただくことで、伝統技術を守り、後世に伝えていく使命を果たしていきたいと考えています。お問い合わせ先(公財)京都産業21連携推進部産学公・ベンチャー支援グループTEL:075-315-9425 FAX:075-314-4720 E-mail:sangaku@ki21.jpManagement & Technology for Creative Kyoto 2014.92