ブックタイトルクリエイティブ京都M&T 2014-7・8(No.102)

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クリエイティブ京都M&T 2014-9(No.103)

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クリエイティブ京都M&T 2014-9(No.103)

技術トレンド情報データへ、自由に相互変換するための技術の総称である』と位置づけておいたほうが、今後の技術開発の方向性が広がっていく」「デジタル工作機械は、『文字の読み書き』ではなく、私たちの『ものの読み書き』を再定義してくれる契機ともなっています。」5)と述べて、「もののリテラシー」の出現とその重要性を指摘するなど、大きな社会変化の一端を担っていることの自覚と意欲を語っている。ここで注目すべきなのは、ファブラボの利用者たちは、ネットを介してつながり、グローバルなコミュニティを形成している、という事実だ。自分が作ったデータは、ネット経由で他人と簡単に共有できる。事実、そうしたデータ共有を可能にするサービスやコミュニティが続々と立ち上がっている。営利を目的とする「製造業」とは異なり、自分たちの愉しみのためにモノづくりにチャレンジし、自分が作成したデータを無償で他者と共有することにもあまり抵抗がない。まさにソーシャルなファブ、なのである。FAB9、FAB10、FAN1前述したように、ファブラボの大きな特徴のひとつは、「グローバルにつながる」ところにある。国境を超えてテレビ会議で頻繁に交流するラボも多く、ネット経由で自分たちが作った作品のデータを積極的に公開・交換・共有する動きも強い。そうしたグローバルな交流の推進役の一つが、ファブラボ運営者が毎年集まる国際会議「FAB」で、これまでにノルウェー、インド、オランダ、ペルー、ニュージーランドなどで開かれ、2013年夏には横浜でFAB9が開かれた。海外から40カ国140名、国内を合わせて200名近い参加者による熱気がこもった素晴らしい会議だった。通常の「座学」会議とは異なり、国境を越えたチームを作って与えられたテーマに沿った作品を創るコンペや、うどん、手巻き寿司、お好み焼きなど日本食を作るワークショップ、最近誕生した世界各地の新しいラボの自己紹介プレゼン、その他自由テーマでの会合などのプログラムが多様に展開され、1週間濃密な時間が過ぎていった。FAB10はスペインのバルセロナで今年7月に開かれ、やはり多様なプログラムが展開されたが、なかでも企業でのファブラボの取り組みが注目された。欧州の航空機メーカーのエアバスからは、社内にファブラボを設置し、航空機のデザイン改良に、ラピッドプロトタイピングの手法を活用していると報告された。ナイキでは、衣類を製造する際に使われる大量の水の消費を削減する探索を行い、wikiとファブラボの手法を用い、水をほとんど使わない染色技術をもった企業と出会ったと報告している。グーグルからもファブラボの手法をスマホの開発に導入しているとの報告があった。アジアでは、フィリピンのボホールで、5月に第1回のファブラボアジアネットワーク会議(FAN1)が開催され、開会式にはなんとアキノ大統領が飛び入り参加して、スピーチをするサプライズまであった。ファブラボ大分開設筆者も在籍し、大分に本部を置く公益財団法人ハイパーネットワーク社会研究所では、2013年夏に東京で「ソーシャルファブカンファレンス」、大分で「別府湾会議2013ソーシャルファブを育てよう」というイベントを連続開催し、ソーシャルファブの可能性についての「検証」を試みた。ファブラボ運動を推進する田中浩也氏をはじめ、フランスのFACLABのローラン・リカール氏とオランダのピーター・トロクスラー氏をゲストに招き、東京では作家の平野啓一郎氏の講演や、ファブカフェを主宰する林千晶さん、大分県立芸術文化短期大学の中山欣哉学長、元Google名誉会長の村上憲郎氏、モノづくり系女子の神田沙織さんなどによるパネル討論を行い、大分では「ファブ祭り」として地元の親子向けのワークショップも併催するなど、日本で「ソーシャルファブ」がどう進化するか、議論をたたかわせ、実践を試みた。その後大分県より「おおいた元気創出基金」による事業公募が行われ、ハイパーネットワーク社会研究所が受託し、2014年1月に「ファブラボ大分」を公式にオープン、日本で7番目、九州では初となるファブラボを開設した。子供たちを対象にしたワークショップなどは高い人気があり、3Dプリンターの活用法に関心が集まるなど、注目されている。1)http://www.fabfoundation.org/fab-labs2)http://fablabjapan.org3)http://diamond.jp/articles/-/39972ほか4)公文俊平『情報社会学序説』(一部省略・修正)、NTT出版、2004年5)田中浩也『SFを実現する3Dプリンタの想像力』講談社新書、2014年6)http://www.faboita.org/7)https://www.facebook.com/FabLabSaga6)九州ではファブラボ佐賀が5月にオープン7)、福岡県大宰府でも開設準備中で、さらに福岡、久留米、中津などにも動きがあるなど、ファブラボやソーシャルファブリケーションへの関心は高まっている。まだまだ社会的な課題、運営上の悩みも多いソーシャルファブだが、それでも「ファブ社会」への流れは確実に強まっている。今後、日本の各地に続々とファブスペースが登場してくるだろう。自分たちで自由に好きなものが作れる、ということの喜びや楽しさを一度知ってしまうと、なかなか元には戻れないのだ。関心をもたれた方は、ぜひ実践を始められたい。〈参考〉会津泉氏プロフィールハイパーネットワーク社会研究所所長?多摩大学情報社会学研究所教授・主任研究員?情報支援プロボノ・プラットフォーム共同代表理事?総務省IPv6高度利用研究会構成員その他政府並びに情報通信関連団体の各種委員等を多数歴任お問い合わせ先京都府中小企業技術センター企画連携課企画・情報担当TEL:075-315-8635 FAX:075-315-9497 E-mail:kikaku@mtc.pref.kyoto.lg.jpManagement & Technology for Creative Kyoto 2014.914