ブックタイトルクリエイティブ京都M&T 2014-7・8(No.102)

ページ
14/24

このページは クリエイティブ京都M&T 2014-9(No.103) の電子ブックに掲載されている14ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

クリエイティブ京都M&T 2014-9(No.103)

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

クリエイティブ京都M&T 2014-9(No.103)

技術トレンド情報「ファブ社会」の到来~情報社会の新しいカタチの台頭~京都情報産業協会との共催で開催した府民セミナーにおいて上記のテーマで講演いただいた内容をハイパーネットワーク社会研究所所長会津泉氏に寄稿いただきました。3Dプリンターへの期待プラスティック樹脂などの素材を好みのカタチに作ることができる3Dプリンターが注目を集めている。3Dプリンター自体は80年代に産業用機械として開発が始まり、90年代に広く商品化され、製造業中心に普及していった。しかし、最近一部の基本特許の有効期限が切れ、操作ソフトがオープンソースで公開されたことから、10万円を切る廉価版が登場し、普通の市民にも手が届くようになり、生活や教育の場での工作、趣味や自己表現のツールとして注目され、期待が高まっている。複雑な形状をした物体でも、CADソフトで3D図面を描くか、3Dスキャナーで実物をスキャンしてデジタルデータを制作すれば、機械が自動的に造形してくれる。既存データをダウンロードしてもよい。デジタルデータによる工作は修正ややり直しが簡単で、設計や製造技術に詳しくない人、工作のスキルがそれほど高くはない一般の人々でも新しい可能性に挑戦できる。レーザーカッター、ミリングマシン(切削機)などのデジタル工作機械も低価格化が進み、従来の業務用とは異なる新しい利用者層の間に広がりつつある。ファブラボは、「ほぼあらゆる物を作る」というコンセプトのもとに、様々なデジタル工作機械を備え、市民に開かれた工房として活動し、世界的なネットワークを構成している。インド、南アフリカ、ブラジル、ペルー、インドネシア、フィリピンなど途上国にも多く、日本では2011年、筑波と鎌倉から始まり、東京・渋谷、大阪・北加賀屋、仙台、横浜・関内、大分、鳥取、佐賀、浜松と広がっている。2)ウェブ社会からファブ社会へ情報社会のなかでの「ソーシャルファブ」の意義ファブラボ運動の先頭に立ってきた慶應義塾大学SFCの田中浩也准教授は、デジタル工作機械の新たな利用が生んでいる現象は、広く「ウェブ社会からファブ社会への移行だ」と述べている。3)この視点は、今起きているのは「第三次産業革命」と「第一次情報革命」の同時進行で、それはまさに情報社会そのものの進化だとする、多摩大学情報社会学研究所の公文俊平所長の情報社会論に触発されて生まれたといえる。公文氏は、10年前にガーシェンフェルド教授の研究に注目して、いち早くこう書いた。「ファブスペース」の出現こうした流れを推進するのが、デジタル工作機械を備えた共同利用型施設、総称して「ファブスペース」である。その代表例が「ファブラボ」で、米国マサチューセッツ工科大学のニール・ガーシェンフェルド教授によって提唱され、現在世界360ヵ所以上に存在、急増している。1)「ファブ」には、英語の「Fabrication=作ること」と、「Fabulous=素晴らしい」の二つの意味が含まれている。運営母体は大学や自治体、非営利団体から企業まで様々で、ビジネスモデルも異なるが、ガーシェンフェルド教授らが定めた「ファブ憲章」の条項を満たしていることを自己認証することで、「ファブラボ」と名乗ってよいという仕組みになっている。地域別世界のファブラボ(http://www.fabfoundation.org/fab-labs)「第三次産業革命の突破局面における主導産業の候補としては、アメリカのMITのガーシェンフェルド教授が構想している個人用万能工作機械―つまり購入してサービスを自家生産する、消費者用機械というよりは消費者用機械そのものを製造できる機械―産業などがより有力なように思われる」4)公文氏は、いずれ家庭に個人用工作機械が広く普及し、そうした工作機械を生産・提供する産業が、今日の家電や自動車産業に匹敵する主要産業になるだろうと喝破していたのだ。身近にいた筆者などは不明にも、「そんなSFのような話が近未来に実現するとはとても思えない」と考えていた。それが最近になって急速に実現しつつある。そしてその象徴が低価格化により普及する3Dプリンターにほからない。田中氏と公文氏は最近数回にわたって対談を行った。田中氏は、数百年単位の歴史的視点をもって構想する公文・情報社会論に感銘を受け、ファブラボ関係者の間でも社会のあり方についての議論が必要だと痛感したようだった。公文氏は、ファブラボ運動の最新の実践状況を田中氏から直接聞いて、それが「インターネットの次」といえる大きな歴史的な意義をもつものであることの確信をおおいに深めたのだった。事実、田中氏は近著『SFを実現する3Dプリンタの想像力』のなかで、「デジタルファブリケーションとは、『デジタルデータからさまざまな物質(フィジカル)へ、またさまざまな物質(フィジカル)をデジタル13 Management & Technology for Creative Kyoto 2014.9